旧 太極拳よもやま話 未分類

格闘技としての太極推手

2013年11月22日

 太極拳や推手は一定のレベルに達すると健康という目的のみならす、格闘技としても成り立ちますが、但し、条件設定をもう一度確認させて頂くと太極拳や推手は基本的に弱者が強者に立ち向かう拳法であり、一定レベルの手法や太極勁の習得が出来ないとこのような独特な設定条件での格闘技は成立しません。これが謂わば、太極というものの一番難しいところではないかと思いますし、即効的近代社会とはかなり距離があることは一目瞭然ですが、逆に近代社会であればある程人間はゆとりのある生活リズムを逆に憧れてしまうことも珍しくないです。
 太極拳と言う拳法はかつて、内家拳と言われていた時代があり、その特徴の一つとしては「内勁」を大切にしていく拳法であることが挙げられます。太極拳の内勁は十三種類ございます。つまり「粘、连、黏、随、不丢顶、?政、?髄、挤、按、採、挒、肘、靠」でございます。これはもうわたくしの「太極拳四方山話し」何度も言及していますが、実際にこの十三勢が身につくことは数十年もかかります。そして、はっきり申し上げますと身に付かない人が殆どですね。わたくしも成人になりかけていた頃に、師馬岳梁の3人の男の子とほぼ毎日のように推手をしていて、互いに太極勁があまり身に付いていない時代でしたのでいつものように力勝負で推手をしていました。師の子供は皆、体が大きくて百キロを切る人間はいませんでしたが、わたくしは重労働の常習犯ですので馬鹿力は有り溢れていましたね。それこそ師の家具や鏡も何度も壊しましたね。両師にはかなり怒られる日々でしたね。物を壊したことではなく、無理して推手をするからです。でも、今になって私達はもう馬鹿力で推手することはしなくなりました。
 推手では二つの考えがありますが、一つは相手の接触した時になるべくして相手の勢いに順してその勢いの方向へ自分も相手のほぼ同じ勢いと速度で動かして躱すことで、もう一つはその勢いに対等する程の勢いで相手に向かってぶつかり相手を揺さぶってその問題点を見つけることです。前者は後方や横へ躱すことを重んじている為相手の勢いに少しでも不合理な接触をしてしまうと押し出されてしまいますが、「太極勁」の修練ではやはりこのような沢山の負けの下で一瞬の躱し方を瞬きの間の感覚を覚えることは可能であります。機能的に申し上げますと人間の両手は軽さの中で様々な微妙な感覚が覚えられるのです。一方、一瞬のぶつかり合いはあまり太極的とは申し難いですが、昨今のどの分野に於いても勝負の世界と言われている今日では致し方がないですが、相手の勢いを受けてからは太極っぽく後方や左右へ躱すことを工夫していれば「太極勁」の修練目的としても成り立ちます。わたくしが当時、馬江豹、馬江熊、馬江麟の3人とのぶつかり合いも無駄ではないはずでしたね。少なくとも疲れきったところでは上手い手を考えるしかないですね。
 しかし、様々な推手スタイルが充実している今日は長い時間にぶつかったままの推手であったり、相手の手との繋がりは色々なところで断続的であったり、あまり道教的とは言辛い両手で相手の胸を思いっきり押したり、(男性が女性の胸を押すとまた別の問題が起きますが)体力の実力差で顛倒、しかも格闘技に慣れていない人々がやられたりすることも暫し起きています。このような現象を結論で言ってしまうと太極推手の実力低下そのものではありませんでしょうか。
 私は自分の教室で推手を教えている時はある程度のぶつかり合いを許しておりますが、牛のけんかのような推手は禁じ手として一応、ないように勧告しております。理由は簡単ですが、弱者の拳法に相応しくないからです。

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